メダカにおける潮汐リズムと産卵数の関係ライン

観察期間 2001.06.22〜09.08
観察者 中本 賢


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T.観察概要

かねてから気になっていた事を、めだかの卵で観察しました。
海の干満は、太陽と月二つの引力によって引き起こされますが、実際の干満を起こす力は、太陽に比べ、月の方が約2倍も大きいそうです。つまり、潮の干満の主役は月ということになります。
月は地球の周りを約29.5日の周期で回転します。地球上で、最も引力が強く働くのは、月と地球と太陽が一直線に並ぶ時ですから、29.5日の半周分、約14.8日ごとに潮汐で言う大潮が訪れています。
多摩川で水生動物などの繁殖行動や生態観察を行っていると、それぞれ観察事柄の変化が、この潮汐のリズムによって起きているのではないか・・・とかねてから疑いを感じていました。
生態上まったく海との関わりを持たない純淡水魚であっても、その疑いは大きく、特に生殖行動については、余地もなく信じ込んでいるフシがあります。
でも、実際はどうなんでしょう・・。潮の干満にまったく影響されることのない多摩川中流域の魚にも、潮汐のリズムはそれぞれの生殖行動となんらかの関わりがあるのでしょうか・・・。多摩川産のメダカを使い、潮汐表にあるリズムと産み付けられた卵の数とで、その関係を観察してみました。
  


U.観察方法

容量約40リットルの水槽に、メス5オス10匹のメダカの成魚を放し、産卵した卵の数を正確にカウントするために、産卵床を水草でなくアクリル系のモール状の毛糸を使用しました。
卵のカウントは、水槽の照明点火後、3〜4時間置き、産卵めだかの卵がすべて着床した後に、アクリルの毛糸(人工モサモサ)を取り出しカウントしました。

生み出された卵は10〜15個 人工モサモサ 卵は日割りで管理した。

観察期間は、水温の安定した6月22日から9月8日までの計76日間。観察後半は、メダカが着床した卵を食べることを覚えて、カウント数に安定性を欠くようになりましたので、それ以前のデータを有効とし、以下は切り捨てています。
以下は、カウント有効期間とした6月22日の大潮日から8月3日までの記録です。

日付 潮汐 汐最大値(cm) 産卵数 孵化数 日付 潮汐 汐最大値(cm) 産卵数 孵化数
06.22 大潮 満193 干−7 88 *** 07.07 大潮 満185 干 18 20
06.23 大潮 満192 干−6 113 *** 07.08 中潮 満185 干 24 34
06.24 中潮 満188 干−0 32 *** 07.09 中潮 満182 干 32 11
06.25 中潮 満182 干 12 43 *** 07.10 中潮 満178 干 41 12
06.26 中潮 満176 干 27 46 *** 07.11 中潮 満175 干 51 10
06.27 中潮 満170 干 45 38 *** 07.12 小潮 満171 干 63
06.28 中潮 満166 干 64 29 *** 07.13 小潮 満167 干 77 13
06.29 長潮 満164 干 82 *** 07.14 小潮 満164 干 91 13
06.30 若潮 満145 干 96 29 *** 07.15 長潮 満152 干10 15
07.01 中潮 満164 干 54 27 *** 07.16 若潮 満150 干 66 11
07.02 中潮 満166 干 39 35 18 07.17 中潮 満162 干 47 27 59
07.03 中潮 満170 干 27 25 07.18 中潮 満175 干 29 74 32
07.04 中潮 満177 干 20 42 07.19 中潮 満186 干 14 36
07.05 大潮 満182 干 16 58 31 07.20 大潮 満194 干  3 52 10
07.06 大潮 満184 干 15 13 45 07.21 大潮 満199 干−3 44 21
*** *** *** *** *** 07.22 大潮 満199 干−2 33

産卵直後の卵、中央の輪は沈下しない為の油の粒。 産卵2日後、うっすらと背骨が見え始めた。 産卵4日後、目の形が解かる。
産卵6日後、体の形がはっきりしてくる。 産卵8日後、目の形も整い体がほぼ出来上がった。 産卵11日目、無事孵化。体長約5ミリ心臓が透き通って見える。

V.記録の集計

以上の記録を、汐別に分けて1日当たりの平均産卵個数を割り出してみますと、次のようになります。

汐名 合計日数 合計卵数 1日当たりの平均
大潮日 8日 421個 52.625個
中潮日 15日 443個 29.533個
小潮日 4日 51個 12.75個
長潮日 2日 9個 4.5個
若潮日 2日 33個 16.5個

以上の通り、潮汐のリズムがメダカの産卵において、なんらかの関係があることが分かりました。

W.観察をして思ったこと 

遠い昔、お年寄りから聞いた話で、“産婆さんは、潮の満ち引きを見ながら子どもを産ませるんだ・・・・“ などと、今になればとても気になる話を聞かされた覚えがあります・・・。かくゆう私も産婆さんの手で取り上げられました。「顔が細長くてずい分楽なお産だった」と、後に聞かされています。産婆さんの話が、今回の観察と同じ話かどうかは、潮汐に頼って産まれた私がメダカではないので分かりませんが、もしかすると大変に近い話ではないかと考えています。
これまで、それを実感するようなことは何回かありました。
多摩川における魚の産卵や遡行など、潮汐のリズム、特に大潮時にそれぞれの観察事柄に大きな変化を感じます。とりわけ産卵行動では、大潮日には産卵群の数が突然に増えることが多くありました。
海に関係する生き物では、そのリズムに大きく影響を受けるのは、良く知られています。
釣り餌として使われるゴカイは、新月近くで群泳行動する数が最大に達し、アカテガニの幼生の放出は、7月から9月の終わりの新月と満月付近の満潮時刻で最大に達するそうです。
どうやら、メダカが卵を産むのと、僕が産まれた理由は一緒のようですね・・・。
月の引力は、海の水だけを引っ張っているわけではありません。当然、地球上の全てのものに対して引力は働きます。水よりははるかに固く変形しにくい地殻も、最大で10センチほども変化しているそうです。・・・イヤハヤ、すごい力です。
その力で、空気はもちろん、川の水もそして人間やほかの生き物たちも、みんな月に引っ張られているのだから、やっぱり影響がないと考える方が不自然なのかもしれません。
今後の産卵観察に、潮汐表は手放せなくなりそうです──。

By KEN NAKAMOTO
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13.March.2002



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